散歩中に急にキャンとないて痛がり、跛行をしていた症例です。
検査の結果、膝蓋骨(膝のお皿)が内側に外れること(膝蓋骨内方脱臼)が原因と判明しました。
膝蓋骨内方脱臼という病気は小型犬(トイプードル、ヨークシャーテリア、ポメラニアンなど)では多く認められる病気です。
脱臼があっても痛みや跛行せず、気づかないケースもあります。その場合病気とは認識されずそのまま年をとり、高齢になって関節炎や靭帯疾患などで痛みに悩まされてしまう動物もいます。
正常な膝関節のレントゲンです。楕円形の膝蓋骨が大腿骨の中央に位置しているのがわかります。
次に内方脱臼を起こしているレントゲンです。先ほどの画像と比べて膝蓋骨
が内側にずれていいることが分かります。
手術は膝蓋骨が乗っている滑車溝という窪みが深くなるように形成し、膝蓋骨と付着して内側に引っ張るように作用している靭帯のアライメントを整えるという方法で行いました。
滑車溝をくさび状に切除を行う。
切除片を取り外し、最後に元の位置に戻すため丁寧に保存しておく。
ラウンドバーで溝を深くする。
適切な深さが確保されたら、最初に切除した骨片を元に戻す。
次に膝蓋骨と付着している靭帯の遠位端(脛骨粗面)を外側に移動させる。
矢印の脛骨粗面の骨を一部切除して、角度を外側に変更する。
適切なアライメントの位置に合わせ、ピンで固定を行う。
術後のレントゲンです。
膝蓋骨が中央に戻りました。
アライメントを調節するために脛骨粗面を切除した切除ラインです。
しばらくは歩き方に違和感が残りますが、1ヶ月後には痛みも違和感もなくなることでしょう。